安部公房の小説論総覧:安部公房全集より
ある契機あり、我がMacintoshの中に置いてをいてももつたいないので、広く世に伝へて、読者の安部公房論に資することもあらうかと思ひ、ここに安部公房の小説観について安部公房が発言してゐる全集の当該ページをファイルより取り出して以下にまとめましたので、ご覧下さい。
あなたが安部公房論を書く際に、あなたの筆が小説論に及ぶ場合には、これらの作品を其の論拠として下さい。論ができましたら、もぐら通信へお寄せ下さると有難い。4つには便宜上分けてありますが、お互ひに相互参照的(referencial)であることはいふまでもありません。
I 物語は、時間の空間化であるといふ安部公房の小説観
時間の空間化、即ち函数化といふ小説観はこのまま安部公房の演劇観であり、これを演技論に問題下降したものが、安部公房スタジオの演技論の中核概念「ニュートラル」である。
1。『歴史を棄てるべき時』:全集第25巻、392ページ:
武満徹との対談にこのことが出てくる。それから、プロットの強固さについて:ポーから学んだことが。
2。安部公房氏(散文精神):全集第28巻、298ページ
3。『賭け』という小説がある:全集第11巻、305ページ
4。『作品が命じる』:全集第19巻、21ページ
5。『作品の側に主導権(私の小説作法)』:全集第19巻、21ページ
6。『抽象的小説の問題』:全集第7巻、154ページ
7。『何を書きたいか』:全集第4巻、348ページ
8。『なぜ書くか』:全集第28巻、69ページ
9。『生の言葉』:全集第1巻、481ページ
10。物語とは:第23巻、111ページ
11。わが作品を語る:第30巻、174ページ
12。わが小説(「第四間氷期」):第15巻、436ページ
13。わが文学の揺籃期:第23巻、24ページ
やはり1970年には、前期20年を振り返ったということを、この題名は意味している。
14。わたしの小説観:第4巻、282ページ
15。わたしの小説作法:第19巻、21ページ
16。わたしの文章:乳5巻、343ページ
17。周辺飛行1:物語とは(全集第25巻、111ページ)
「物語とは、因果律によって世界を梱包してみせる思考のゲームである。現在というこの瞬間を、過去の結果と考え、未来の原因とみなすことで、その重みを歴史の中に分散し、かろうじて現在に耐え、切り抜けていくための生活技術としての物語。」
18。私の文学観 演劇観:全集第23巻、350ページ
19。『僕の小説の方法論』:全集第3巻、177ページ
20。全集第23巻、109ページ:夢化作用ー第13回女流新人賞選評
ここに積算の文学についての自分の創作方法のわかりやすい説明がある。これを活用すること。
21。『散文精神』:全集28巻、298ページ
22。『小説の書き方』:全集第4巻、492
23。『小説の好悪像と書き方(二)』:全集第4巻、492ページ
24。『小説の秘密』:全集第27巻、54ページ
25。『小説は考えて』:全集第25巻、537ページ
26。『小説は無限の情報を盛る器』:全集第28巻、49ページ
27。『小説を生む発想』:全集第23巻、337ページ
28。『ストーリー主義の克服』:全集20巻、136ページ
29。『ストーリーという罠』:全集第8巻、141ページ
30。『「砂の女」と小説作法』:全集第19巻、207ページ
31。『創造のプロセスを語る』:全集27巻、29ページ
32。『創造のモメント』:全集第2巻、98ページ
33。『誰のために小説を書くか』:全集第2巻、375ページ
34。『僕の小説の方法論』:全集第3巻、177ページ
II 仮説設定の文学とSF文学論:自分の仮説設定の文学の淵源をポーに求めてゐる
1。私の文学を語る:全集第22巻、42ページ上段
子供のころから文章を書くのが好きだったという発言がある。小学生のころ作り話をして先生に盗作の疑いをかけられて叱られたこと。そうして、中学二年頃に、ポーに熱中したことが発言されている。
このインタビューは、この前後も非常に重要な安部公房の発言を含んでいる。
2。私の創作ノート:全集20巻、162ページ
3。『仮説の文学』:全集第15巻、237ページ
4。『仮説・冬眠型結晶模様』:全集第7巻、77ページ
5。『空想科学小説について』:全集第15巻、237ページ
6。『空想科学小説の型』:全集第8巻、252ページ
7。『空想的リアリズム』:全集第7巻、50ページ
8。『ぼくのSF観』:全集17巻、288ページ
III 小説の構造と言語の構造
安部公房が考へてゐたのは、言語構造と作品構造の一致である。作品構造がそのまま言語構造である小説を書かうとした。以下、これに関する当該箇所を。
1。<安部公房氏語る>::第29巻、194ページ
『長編書き下ろし(仮題「飛ぶ男」)やってて、ひどい病気して。で、入院してる間に、ちょっと焦ったんじゃないか。あんまり長いこと書いていないこともあるし。それで向こう側から、あるものが見えてきたんだよ。』
2。安部公房さんに聞く:全集第29巻、228ページ:
『カンガルー・ノート』は、「全体がびっくり箱みたいに」「フランス料理から日本の懐石まで全部入っているような」
3。大江健三郎との対談:「構造が全部ぬけたテントの梁みたいな小説」(全集第29巻、74ページ上段)
IV 安部公房の言語論
『安部公房文学の毒について~安部公房の読者のための解毒剤~』の一章「4。言語論といふ毒(問題下降の毒)」の最後に、安部公房の言語論をまとめて引用しましたので、ご覧下さい。
安部公房の言語論に関する発言はこれ以外にも全集のあちこちに多くありますが、ここでは小説論との関係で僅かに上記の参照に留めます。安部公房の言語論に関する作品の総覧はまた別途掲示します。
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