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2015年10月31日土曜日

中田耕治さん若き安部公房を語る13:中野重治と平野・荒論争勃発の日


中田耕治さん若き安部公房を語る13:中野重治(共産党)と平野・荒(近代文学)論争勃発の日


全く、中田耕治さんという方の人柄のよく出ている文章であり、思い出です。お読みください。


【37】


 中野重治が「展望」に書いた「批評の人間性」(1946年)は、荒正人、平野謙に対する最初のきびしい批判だった。
 「展望」が本屋の店頭に並んだとき、私もすぐに読んだ。戦後の共産党の「近代文学」に対するはじめての激烈な批判だった。
 私は「批評の人間性」を読んで、すぐに「近代文学社」に行った。

 まだ午前中だったが、私が着いたときはすでに荒正人がいて、大きな机に向かって原稿を書いていた。私が挨拶すると、荒正人が顔をあげた。
 顔が紅潮していた。日頃はおだやかで、分厚いメガネの奥から優しいまなざしを向ける荒 正人だったが、この日、私が見たのは怒髪天を衝くといった表情だった。
 事務の藤崎恵子が私に寄ってきて、
 「耕さん、今日はたいへんよ。荒さん、わたしにも口もきかずに原稿を書いているの」
 低声でいった。これが、荒・平野vs中野の論争の発端だった。

以下次のURLへ:




2015年10月24日土曜日

もぐら通信第38号を発行しましたので、お届けします


もぐら通信第38号を発行しましたので、お届けします。


目次は、次の通りです。

0 目次…page 2
1 ニュース&記録&掲示板…page 3
2 笑いましょう(全集未収録のエッセイ):安部公房…page 6
3 安部公房を巡る想い出(連載第7回):中田耕治…page 9
4 安部公房の写真について1:卒業論文レジュメ:熊谷良樹…page 17
5 ABE日誌6:滝口健一郎…page 20
6 何故安部公房は松蔵のスイートポテトが好物だったか…page 21
7 特集:安部公房と成城高等学校(連載第3回)…page 23
8 リルケの『形象詩集』を読む(連載第7回)~リルケ・戯曲『石の語る日』・
 大坪都築・ラジオドラマ『棒になった男』・小説『S・カルマ氏の犯罪』~ …page 47
9 編集者通信:奉天の窓から日本の文化を眺める(4):幕の内弁当…page 68
10 編集後記…page 79
11 次号予告… page 79


では、今月も、あなたの巣穴で、安部公房との佳きひと時を。


もぐら通信

2015年10月17日土曜日

中田耕治さん若き安部公房を語る12:敗戦直後の凄まじき世相


中田耕治さん若き安部公房を語る12:敗戦直後の凄まじき世相

中田耕治さんが、敗戦直後の凄まじき世相を語っています。

若い安部公房の生きた時代がどのような時代であったのか。この文章を読んでから、二十代前半の安部公房の作品を読むことは、無駄ではないでありましょう。以下、中田耕治さんのウエッブサイトからの引用です:



敗戦直後から冬にかけて、激烈なインフレーションと食料難が襲いかかってきた。

 大森でも、敗戦の翌日には、駅前から入新井、いたるところに闇市ができた。この闇市に無数の人が押し寄せた。焼け跡にゴザやサビついたトタンをしいて、古新聞やボール凾の上に板戸を載せただけの場所に、戦時中にはまったく見なかった隠匿物資、配給ルートにはのらない食料、衣料品がならべられて、むせ返るような活気があふれていた。
 二、三日もすると、この闇市も、ボロ布や、軍用毛布、テントの囲い、よしず張りなどが多くなって、ヤクザや第三国人が勝手に土地を占拠しはじめ、あっという間にバラック建ての店が出はじめる。

 (略)

 戦後の食料難の実態は、もはや想像もつかないだろう。
 誰もが飢えていた。食料の配給も欠配がつづく。
 敗戦直前までは、僅かな配給量にせよ、なんとか主食のサツマイモ、大豆などが配給されたが、敗戦後は、1本のサツマイモ、ひとにぎりの大豆さえも配給されなくなった。
 
(略)

 1945年12月、アメリカ兵が颯爽とジープをはしらせる町に、おびただしい数の浮浪者があふれていた。浮浪児もいた。そして、若いGI(アメリカ兵)めあてにあらわれたパンパンと呼ばれる街娼の群れ。大森の駅近くにバラックの映画館が急造されたが、そのすぐ前は京浜東北線の土手で雑草が生い茂っていた。そこに、若い女の子がつれ込まれて強姦された。女の子の悲鳴が聞こえたが、誰も助けようとしなかった。
 これが敗戦国の現実だった。明日のことは誰にもわからない。それでも、奇妙な解放感がみなぎっていた。


2015年10月13日火曜日

中田耕治さん若き安部公房を語る11:「祖父が漢学者だったという作家」は誰なのか

中田耕治さん若き安部公房を語る11:「祖父が漢学者だったという作家」は誰なのか

連載【33】のご投稿あり。以下に冒頭を引用して、お伝えします。:

こんなとりとめもない、気ままな回想でも、熱心に読んでくださる奇特な読者がいる。
 この回想(7月14日)について、思いがけない質問を受けた。
 TKという方から、このブログに出てくる「祖父が漢学者だったという作家」は誰なのかという質問が寄せられた。

 やはり、伏せなかったほうがよかったか。
 私としては、安部公房を中心に、いわば気楽に思い出話を書いているつもりだったので、この作家にふれる余裕はなかった。だから、わざと伏せたのだが――この作家の名を知りたいという読者がいる。そのときは、たいして深く考えもしなかったのだが、これがきっかけで、私の内部で戦後の文学者たちの思い出が思いがけない方向にひろがって行った。

以下、次のURLへ:


2015年10月4日日曜日

安部公房全集未収録のエッセイを発見しましたので、もぐら通信(第38号)の目次を新しくしました。

安部公房全集未収録のエッセイを発見しましたので、もぐら通信(第38号)の目次を新しくしました。


0 ニュース&記録&掲示板 
1 目次
2 笑いましょう(全集未収録のエッセイ):安部公房(許可のとれ次第)
3 安部公房を巡る想い出(連載第7回):中田耕治
4 安部公房の写真について:熊谷良樹(許可のとれ次第)
5 特集:安部公房と成城高等学校(連載第3回)
6 何故安部公房は松蔵のスイートポテトが好物だったのか
7 ABE日誌6:滝口健一郎
8 リルケの『形象詩集』を読む(連載第7回):『飾り彫りのある柱の歌』:岩田英哉
9 編集者通信:奉天の窓から日本の文化を眺める(4):幕の内弁当
10 編集後記
11 次号予告


2015年10月3日土曜日

もぐら通信(第38号)の目次が決まりましたので、お知らせします。

もぐら通信(第38号)の目次が決まりましたので、お知らせします。


0 ニュース&記録&掲示板 
1 目次
2 安部公房を巡る想い出(連載第7回):中田耕治
3 安部公房の写真について:熊谷良樹(許可のとれ次第)
4 特集:安部公房と成城高等学校(連載第3回)
5 ABE日誌6:滝口健一郎
6 リルケの『形象詩集』を読む(連載第7回):『飾り彫りのある柱の歌』:岩田英哉
7 編集者通信:奉天の窓から日本の文化を眺める(4):幕の内弁当
8 編集後記
 次号予告


もぐら通信(第三版)をお届けします。


もぐら通信(第三版)をお届けします。


読者より、ご丁寧なる御指摘あり、次の2箇所を修正しました。

1。9ページ:『カメラに首ったけ』
9ページの上段に、出典を明示し、平凡社発行の『太陽』(1999年6月号)からの転載であることを明らかにしました。

2。53ページ:『奉天の窓から日本の文化を眺める(3):紐』
インタビュアーの名前がすべて安部となつていましたので、これを正し、インタビュアーを「斎藤」にあらためました。


第二版のURLは削除しましたので、ご了解下さい。


秋の日のもぐらの好日を祈らむや

もぐら通信