中田耕治さん若き安部公房を語る13:中野重治(共産党)と平野・荒(近代文学)論争勃発の日
全く、中田耕治さんという方の人柄のよく出ている文章であり、思い出です。お読みください。
【37】
中野重治が「展望」に書いた「批評の人間性」(1946年)は、荒正人、平野謙に対する最初のきびしい批判だった。
「展望」が本屋の店頭に並んだとき、私もすぐに読んだ。戦後の共産党の「近代文学」に対するはじめての激烈な批判だった。
私は「批評の人間性」を読んで、すぐに「近代文学社」に行った。
まだ午前中だったが、私が着いたときはすでに荒正人がいて、大きな机に向かって原稿を書いていた。私が挨拶すると、荒正人が顔をあげた。
顔が紅潮していた。日頃はおだやかで、分厚いメガネの奥から優しいまなざしを向ける荒 正人だったが、この日、私が見たのは怒髪天を衝くといった表情だった。
事務の藤崎恵子が私に寄ってきて、
「耕さん、今日はたいへんよ。荒さん、わたしにも口もきかずに原稿を書いているの」
低声でいった。これが、荒・平野vs中野の論争の発端だった。
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