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2014年5月10日土曜日

安部公房のアメリカ論2:ジーンズとは何か?


安部公房のアメリカ論2:ジーンズとは何か?

前回の記事で、ジーンズについては、何の贋物であるのか、一寸考えあぐねたところを、ここ数日思いを凝らしてみると、これがジーンズというアメリカ人の発明と、何故アメリカに広まり、また世界に広まったのかということがわかったように思うので、以下に述べてみます。

英語のWikipediaを参照しました。:http://en.wikipedia.org/wiki/Jeans

これによれば、19世紀後半のアメリカで、カルフォルニアのゴールドラッシュの時期に、正確には1873年にJacob DavisとLevis Straussにより発明されたとあります。

これを一着に及んだのは、カウボーイと鉱夫でした。この場合、後者は、一攫千金を夢見る金の発掘者ということになります。

さて、このジーンズをはくということは、前者、即ちカウボーイという、古代の聖書と神話の世界の羊飼いの贋物に脈絡が通じ、その聖性を享受できるということであり、後者、即ち、金の鉱夫になるということは、一攫千金のアメリカン•ドリームを体現することになるのだ。このふたつの形象(イメージ)の備わったズボン(近頃はパンツというようであるが)が、ジーンズである。

これは、アメリカ人に受けるだろう。それから、羊飼い、放牧、その自然の中にいる動物の管理者という形象を感じさせることと、またその飾らなさが、労働着が、従って既存のヨーロッパの確立した格式から逸脱し、これを否定し、同時に、一攫千金という個人の夢をそそるからである。この形象を、世界中の人間が、ジーンズをはいて、共有しているというわけである。

(続く)


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