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2014年10月31日金曜日

『飢えた皮膚』の緑色



『飢えた皮膚』の緑色


もぐら通信にご寄稿戴いている滝口健一郎さんが、もぐら通信の前月号と今月号(第26号、第27号)の2回連載のわたしの論考『もぐら感覚21:緑色』をお読みになって、『飢えた皮膚』にも緑色が登場することをFacebookに書いていらしたので、ご了解を戴いて、そのまま転載致します。


「安部公房は、緑色にこだわった作家だった
 ふっと、開いた『飢えた皮膚』の最後の場面

「そしてある日、おれの皮膚は死の不安に似た冷たさを感じ、暗い緑色に変わっ
 ていった。」

『飢えた皮膚』(S26発表)は、ハードボイルドなタッチの安部氏の初期作
品、高校時代に読んだ。

…「飢えた」という言葉が好きになった原基は、この作品にあったのかもしれない。今晩、再読しよう。」


『飢えた皮膚』は、1951年10月1日に発表された作品。安部公房は、27歳です。

この作品でもやはり、緑色と共に、死と別れが思われています。そして、実際に主人公は、女と離れて遠い「北の国境に近い町に」いるのです。

今この作品の最後をみますと、「三日後れの新聞で、おれは女が発狂し、キムが謎の破産をとげたという記事を見た。」とあります。

この新聞は、安部公房の主題のひとつをよく表すために使う「明日の新聞」です。これが初出かも知れません。もう少し調べてみましょう。

「北の国境に近い田舎町にいた」主人公のとことろに3日遅れで届くので、その新聞の発行される都会から見たら確かに、その新聞は3日前の事件を報じた3日後に届いている「明日の新聞」であり、この新聞の中では過去と未来という時間が空間的に交換されております。

この新聞は、『友達』にも『密会』にも、またこの同じ論理は『第四間氷期』にも電子計算機の発言の在り方として、何度も出てまいります。まだ他にも出てくると思います。あなたも探してみては如何でしょうか。騙し絵の中に類似の形象を見つける遊びのようなものかも知れません。

騙し絵といえば、最近Facebookで見つけた次の騙し絵の中に人間の顔を6つ見つけることができるというのですが、挑戦して、わたしはまだ5つしか発見できておりません。

安部公房の全集全30巻を読むということは、この騙し絵に挑戦することなのかも知れません。わたしのもぐら感覚シリーズとは、そのような試みなのでしょう。このことを気づかせてくれた滝口さんに、いつもながら感謝申し上げます。




[追伸]
今日、到頭6つ目の顔を見つけました。わたしたちはいつも騙されている。




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