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2015年1月2日金曜日

安部公房のOS(Operating System)

安部公房のOS(Operating System)

安部公房のOSは、日本語という自然言語で20歳のときに書いた論文『詩と詩人(意識と無意識)』である。その根底にあるのは、安部公房の言語機能論である。つまり、

言語の本質(関数であること)>その理論化:20歳の『詩と詩人(意識と無意識)』>個別の領域の個々の作品

という関係にある。

そうして、このOSは、地下に潜って、謂わば球根のようにあるのだ。

安部公房は、わたしの言い方で言えばこの地下にある球根という自分の発明したOSを使って創作する自分の創作活動を、若かった当時、sur-realism(surは現実を超えるという意味)ではなく、地下に潜っているので、sub-realism(subはサブマリーン、潜水艦のsub)と冗談半分に言っていたということを、最近信州大学の友田義行先生の論文『地下茎状の原作ー安部公房「友達」論』の註釈で桂川寛の言葉のあるのを読んで知った(http://senryokaitakuki.com/fenceless001/fenceless001_07tomoda.pdf)。

詩は、その最初のapplicationであった。これは、10代の詩群と23歳のときに、それまでの10代の問題に解答を定立した『無形詩集』は、最初の、安部公房のprogramsである

その次に小説を書いた。これも、『詩と詩人(意識と無意識)』というOSで書いた、散文としての、小説のプログラムである。

そのあとに、戯曲を書き、映画やラジオドラマのscenarioを書いた。これが、第三のプグラムである。

これらのプログラムのアプリケーションを、海外の小説家や戯曲 家や映画監督が読んで、それを更に個別言語で展開した。この場合、次の3つのapplicationsがある。

(1)そのまま翻訳をした翻訳物としてのapplication
(2)翻案したapplication
   ①スェーデン人の映画監督の『友達』は、これ。
(3)まったく自由に、安部公房の作品に想を得て、自作の中に取り入れて、作品を創作した、個別言語(日本語やその他の言語)のapplications。読者の書く感想文も、これに入るだろう。

この場合、これらのapplicationsの基礎になっているのは、安部公房のOS、即ち言語機能論であり、20歳のときに書いた『詩と詩人(意識と無意識)』が、その思考論理と形象を具体化したOSなのである。MacintoshにはMachintoshのOS-Xがあるように、WindowsのOSはMS-DOSであるように、安部公房のOSはAK-OS(AbeKobo-OS)と呼びたいものだ。

これが、何故安部公房が多ジャンル、多領域で仕事をできたか、したかという理由を説明するための一番適切な譬喩(ひゆ)であり、しかし譬喩という以上にほとんど事実そのものであると、わたしには思われる。

何故安部公房が多ジャンルで活躍できたのかの言語論的な説明は、前回のこの編集者通信で『梨という名前の天国への階段、天国への階段という名前の梨〜従属文の中の安部公房〜』と題して論じたの、これを読んでくださると、嬉しい。



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