「読書メーター」なるサービスがネット上にあり、『カンガルー・ノート』の感想・レビュー(1126件)を伝えています。
再読。安部公房晩年の作品。かなりドラッギーでぶっとんだ作品。かいわれ大根が足に密生する奇病にかかった男が自走するベッドに導かれて様々な世界を旅する。〈死〉についてのモチーフというのもそうなのだが、〈生かされている〉という感覚を鋭く描いた作品だと感じる。カンガルーの袋と病院のベッド、交通組織。死の恐怖もしくは、死を恐れる自己に対する、言い様のない恐怖。胃がむかついてくるような作品。
ある日自分の足にかいわれ大根が生えてきたら。生きるということはすべてが伏線で、たとえこのような不条理であっても、すべての行い原因は死につながっているのではないでしょうか。「未練なんかあるものか。この風景の潤みは、涙なんかじゃない。休みなく顔面を打つしぶきにきまっている」。賽の河原での不思議な体験、そして生きることへの執念。生に対する体の反応。しかしすべては死に向かって突き進む。作者の思いなのだろうか。時代がまだ安部公房に追いついていないのかもしれない。
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