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2016年10月24日月曜日

坂堅太著『安部公房と「日本」: 植民地/占領経験とナショナリズム』

坂堅太著『安部公房と「日本」: 植民地/占領経験とナショナリズム』



和泉書院の下記のURLに標記著作の広告が出ております:

このウエッブサイトに依って、その内容を見ますと、次のやうなものです。:

「著作者よみ さか けんた
 著者名 坂堅太 著 
 発売日 2016年10月20日
 ジャンル 日本文学研究全般
 判型四六判/232頁

本著は、安部公房にまとわりつく無国籍的・国際的という作家神話を再審に付すことを目指し、ナショナリズムに積極的意義を見出していた一九五〇年代の安部の創作活動に焦点を当てる。満洲での植民地支配者体験、そして占領下日本での被支配者体験がテクストに与えた影響を分析しながら、安部公房と「日本」という問題を再考する。

目次
序章
第一章 「複雑」なナショナリズム―「国民文学」を巡る問題―
第二章 主観的被害者か、客観的加害者か―「変形の記録」における死人形象と戦争責任論―
第三章 〈帰郷〉出来なかった引揚者をめぐって―『開拓村』論―
第四章 安部公房と「一九五六年・東欧」
第五章 脱植民化としての引揚げ―「けものたちは故郷をめざす」論―
終章 「アメリカ」とナショナリズム
あとがき

著者略歴
1984年、大阪府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、三重大学人文学部特任講師。専攻は日本近現代文学。
主要業績に「東宝サラリーマン映画の出発―家族主義的会社観について―」(『人文論叢』第33号、2016年)、「二重化された〈戦後〉―源氏鶏太『三等重役』論―」(『日本文学』第64巻第2号、2015年)など。」

アマゾンでは、現在在庫切れとの表示ですが、発行社の上記発売日を見ますと、これからの発売と思われます:

以上の情報に依って判断して、この論考の価値は、次の所にあると思います。それは、今まで旧態依然の「無国籍的・国際的という作家」論を否定して、これを排し、この論者が、

1。「ナショナリズムに積極的意義を見出していた一九五〇年代の安部の創作活動に焦点を当てる」ということ。それから、
2。「東宝サラリーマン映画の出発―家族主義的会社観について―」(『人文論叢』第33号、2016年)を論じていること、
3。「二重化された〈戦後〉―源氏鶏太『三等重役』論―」(『日本文学』第64巻第2号、2015年)と題して、源氏鶏太を論じていること。

この三つです。

上記1については、国境がなければ越境者などはあり得ないし、成り得ない。この常識を知らない論をなしても、それは安部公房の思考の本質には至らない。

上記2については、最近私は村上春樹の世界に足を踏み入れて知ったことですが、村上春樹の世界を安部公房の論理に従って、内部と外部を交換して、そこに生まれる余剰を陰画として見たら、それが村上春樹の世界であるということでした。また、

上記3については、最近私は村上春樹の世界に足を踏み入れて知ったことですが、村上春樹の主人公は、もし村上春樹という作者が公衆の面前で逆立ちして見せてくれたら、この源氏鶏太という作家(直木賞受賞者)の登場人物たちの世界の主人公に変ずるだろうということでした。

この作家の作品の文章は今でも新しく、みずみずしいものがあります。

その意味でも、この論者の焦点の当て方の拠って立つ視点は、旧態依然の安部公房論を脱した、さういう意味では斬新なものになっているのではないかと期待します。更に再び続けてそういう意味では、先の敗戦後70年を閲して、やっと常識的な安部公房論が語られるのかという期待があります。


発行されたならば、一考を呈したいと思っております。

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