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2016年11月17日木曜日

贋安部公房作詞作曲『贋ラジオ体操の歌』

贋安部公房作詞作曲『贋ラジオ体操の歌』

先だつてある田舎に行つて何日かを過ごしたところ、田舎であるので、毎日ラジオからNHKの朝のラジオ体操の元気なおじさんの声と歌が、嫌でも聞こえる。

子供の頃から、朝から聞こえる此の大きな音を立てる歌が、私にはやりきれず、参つたなあといふ感じであつたものを、今更ながら毎日聞かねばならないといふのは誠に苦痛であるので、今存在の中にゐて贋安部公房になつた安部公房に解決策を求めたところ、次の歌詞が送られて来た。

調子は、原曲は長調であるが、これは短調に変へて、例えば砂の穴に生きる仁木順平の気持ちになつてもの悲しげに歌へといふ指示であつた。贋安部公房作詞作曲とした由縁である。土や地といふ文字を適宜砂に変へて歌ふのも構はないといふことであつた。

存在として此の現実の時間の中で、従ひ実存として生きる貴方の絶望の声調でお歌ひ下さい。存在の中で歌ふ歌なので『贋ラジオ体操の歌』としました。

存在である安部公房のやうに少し唇を開けて、微かに笑つてゐるやうにして、口笛でも吹くやうに歌ふのが望ましい。例えば『カンガルー・ノート』の裏表紙にある次のやうな笑顔に似せて。または『バベルの塔の狸』の「とらぬ狸」のあの笑ひで。つまり、世の人々を存在へと誘ふ案内人の役目を務めるといふ意識を以って。



贋安部公房作詞作曲

贋ラジオ体操の歌

新しい朝が来た 絶望の朝だ
悲しみに胸を閉ぢよ 地下にもぐれ
ラジオの声に 病気の胸を
この臭い風に 開けよ
それ 三 二 一

新しい土の下 輝く闇
苦しみに手足伸ばせ 土にもぐれよ
ラジオとともに 病の手足
この狭い地下室に縮めよ
それ 三 二 一


追記:
変形する前の原曲は次の通り。

新しい 朝が来た 希望の朝だ
喜びに 胸を開け 大空 あおげ
ラジオの声に 健やかな胸を
このかおる 風に ひらけよ
それ 1,2,3

新しい 朝の下 かがやく みどり
さわやかに 手足のばせ 土 ふみしめよ
ラジオとともに 健やかな手足
このひろい 土に 伸ばせよ

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