『燃えつきた地図』の構造:ネットワークの作家安部公房
関西安部公房オフ会の読書会が明後日に開催されます。
その課題図書が、『燃えつきた地図』。
もう大学生のとき以来、何十年振りでこの作品を読み返して、知ったことを図示ししましたので、ご覧下さい。
詳細な『燃えつきた地図』の構造論は、もぐら通信に書きたいと思っております。
一言でいうと、安部公房という作家は、ネットワークでものを考えた作家だということです。
それが、この図の示す襷(たすき)掛けの平行四辺形の意味です。そうして、物語の要素の対称性にも気を配って、全体の均衡(バランス)を図っています。
安部公房は時間を捨象し、構造的に物語を構築したことが、この図からよくわかります。
これはまだ、他の作品に当たって検証しておりませんが、他の作品も同様の構造を具えていると思います。
この平行四辺形の襷掛けの中心の場所が、「彼」が消失し、姿を隠して消えてしまった場所です。
そして、主人公の探偵も、依頼者(命令者)である個別の顔のない、ということは、これは『第一の手紙~第四の手紙』に初出の、運命の顔、存在の顔であることを意味していますが、その女性に対する報告をしているうちに、この平行四辺形のまん中で、行方不明者になるのです。
それも水銀灯の下、水銀灯の光という透明感覚の中で、無名になり、無役になり、無知(記憶がなくなる)になり、記憶の蘇るのを「待つ」のです。
「待つ」ことは、勿論安部公房がリルケから教わった、芸術家の基本的なものの考え方であり、態度、姿勢です。
[岩田英哉]
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