マルテの手記12:透明感覚
安部公房の特有の感覚に透明感覚があります。
しかし、マルテの手記にも、この透明感覚が出て参ります。これを安部公房は自家薬籠中のものとなしたのでしょう。以下、わたしの訳でお伝えします。
「空気のどの要素の中にもある驚くべきものの存在。お前は、透明なるものと一緒に、それを吸い込む。お前の中で、しかし、それは、沈着し、固くなり、尖った幾何学的な形を、器官の間でとるのだ。」
このような形象は、絵画的であり、また数学的であって、10代の安部公房のその数学的な、そして芸術的な能力に、非常に訴え、納得せしめたのではないかと思います。
この透明感覚は、内部と外部の交換の問題と裏腹に、現れます。
初期の詩から晩年の『カンガルー•ノート』に至るまで、この感覚は、主人公が何かを成し遂げたり、物事が一応終わりになったと主人公が感じるところ、小説ならば、話の最後の場面で必ず出て来ます。
詳細は、「もぐら感覚7:透明感覚」と題して、第5号のもぐら通信にて論じましたので、お読み戴ければと思います。ダウンロードは、次のところから:
(この稿続く)
[岩田英哉]
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