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2014年11月8日土曜日

笛井事務所による星新一の戯曲化『New Planet One』が上演されます。



笛井事務所による星新一の戯曲化『New Planet One』が上演されます。




安部公房は、勿論日本のSF文学は戦前からもありましたが、しかし特に敗戦後に勃興したSF文学の世界の住人から、その『壁』の芥川受賞作を以って、戦後最初の、一級のSF作家のひとりと看做されていました。

安部公房の諸作品は、すべてそのように見ようと思えば、SF文学に属する作品だということができます。

即ち、安部公房の語彙を借りて言えば、仮説設定の文学のことです。

星新一という、日本文学にショート・ショートという、日本語で言うならば掌編小説という分野を確立したSF作家の作品は、どれも素晴らしいものです。

最近も読んで、辛辣に敗戦後の日本人の意識を風刺した作品に『マイ国家』という作品があり、これは実にいい作品でした。

この題名のような、私の国家、私的な国家などこの世にあるわけがありませんが、敗戦後の日本人の国家観の喪失状態が、そのまま私の喪失状態になっており、如何に普通に日常的に生きているように見えていて、その人間が、個人であることに固執する余りに公私の分別がなくなって狂気に落ちているのかを、その異常な姿と屁理屈を淡々と異常に、異常に淡々と、描いております。

笛井事務所の奥村飛鳥さんが、安部公房の『友達』と『棒になった男』についで、今回は星新一を取り上げて上演するというのも、何か安部公房とSF文学に通じる感覚を、このプロデューサーにして女優は持っているということなのだと思います。

或いは、仮説設定の役者だということになります。この仮説設定の能力がそのまま、プロデューサーとしての、この女性の能力なのです。

思えば、この女優の学んだ、仲代達矢の主宰する無名塾という塾の名前の無名というのは、やはり安部公房のこころとその文学に真っ直ぐに通じていて、何故この女優がプロデューサーとして安部公房の戯曲をすすんで上演するかという、その始まりを示しているのではないかと思います。仲代達矢もまた、安部スタジオの一員でした。人間の繋がりとは、不思議なものです。

さて、笛井事務所による今回の公演についてです。以下、演劇ニュースというウエッブサイトから:http://www.moon-light.ne.jp/news/2014/11/new-planet-one.html

「星新一のショート・ショート7作品が1つの演劇作品に。

笛井事務所「New Planet One」が11月27日より明石スタジオで上演されます。
ショートショートの神様と呼ばれる星新一の1,000を超える作品の中から、既存の朗読劇とは一味違ったコンテンポラリー・リーディングシアター(朗読活劇)というスタイルで上演されます。

コンテンポラリー・リーディングシアターは、小説オリジナルのテキストをそのまま台本として使用しながら、戯曲台本の演劇同様に見せるもので、上演されるのは、「来訪者」「生活維持省」「肩の上の秘書」「マネー・エイジ」「ボッコちゃん」(新潮文庫刊「ボッコちゃん」所収)、「伴奏者」「敬服すべき一生」(新潮文庫刊「おせっかいな神々」所収)の7作。

キャストは、西健太(劇団NLT)、奥村飛鳥、賢茂エイジ、澁谷晶己、川田小百合、赤松真吾、木内海美、和田華子、千咲としえ、吉川勝雄。

演出は文学座の中野志朗。

プロデュースは無名塾出身の女優・奥村飛鳥が立ち上げ、昨年より安部公房や岸田國士作品などに取り組んできた笛井事務所。

「New Planet One」は、11月27日から30日に明石スタジオで上演。」

チケットの購入は、次のURLから:

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